ロンドン塔

Tower of London

華麗なる歴史の陰に悲劇あり

地下鉄Tower Hill 駅を出たら、そこはもう、かつてロンドン塔が牢獄として使われていた頃は処刑場だった所。処刑は、当時ロンドンの一大見世物だった。群集が見守るなか、ここで人生にピリオドを打った囚人たちは数知れない。1988 年に「ロンドン塔 Tower of London」の登録名で世界文化遺産に指定されている。

ロンドン塔へは、駅の案内標識に沿って行けば簡単。地下道に通じる階段を下りると、崩れかかった壁に突き当たる。シティ・ウォールCity Wallと呼ばれ、ローマ帝国時代(200 年頃)に築かれた砦の一部だ。続いてタワー ・ヒルの裏門跡があり、見上げれば堀と城壁に囲まれた中世風の城が目の前にどっしりと構えている。これがロンドン塔だ。塔を左に見ながら下りていくとチケット売り場がある。ここから入口あたりは、この塔の波乱に満ちた歴史にひかれてやってくる、たくさんの観光客でにぎわっている。特にシーズン中は混むが、待つだけの価値はある。すべてをじっくり見学するつもりなら、所要3 時間以上はみておきたい。

そもそもは1066 年に即位したウィリアム征服王William theConqueror が、ロンドンを守るための要塞を建設したことに始まる。一時期は王室の居城として拡大されたが(それにともない、ロンドン塔は城塞全体を指す名前となり、本来の塔はホワイト・タワーThe White Towerと呼ばれるようになった)、その後、牢獄として使われた歴史のほうが長く、暗いイメージが定着してしまったのは、塔にとっては不幸なかぎり。王族のほか、ジェフリー・チョーサー、トマス・モアなど、多くの著名人が投獄された。ガイドツアーに参加すると、退役軍人による赤と黒の上衣の衛兵ビーフィーターたちが、誰が、どこで、どんなふうに殺されたかなども踏まえ、塔内の歴史をユーモアを交えて説明してくれる。
「ロンドン塔からカラスがいなくなったとき、王政は没落し、塔が崩れ落ちる」というロンドン塔に伝わる伝説も有名。今でも片方の羽の一部を切って飛べなくしたカラスが塔内で飼われている。

ガイドツアーとオーディオツアーがある

ロンドン塔の衛兵ビーフィーターの案内で塔内を巡るツアー(英語)がある。10:00(日・月10:30)から30 分おきに出発、所要1時間以上、最終ツアーは14:30 出発(夏期15:30)。ほかにも、オーディオガイド(日本語あり。£5)を利用して、自分のペースでロンドン塔の歴史をたどることができる。

写真

  • 儀式のときには赤い衣になる
ビーフィーターの正式名称は
ヨーマン・ウォーダー

    儀式のときには赤い衣になる ビーフィーターの正式名称は ヨーマン・ウォーダー

  • クイーンズ・ハウス前の衛兵交替

    クイーンズ・ハウス前の衛兵交替

  • ロンドン塔の守護神カラス

    ロンドン塔の守護神カラス

  • ジュエル・ハウス Jewel House
中世の王室の主要な宝物庫でもあったため、クラウン・ジュエルの一部は常にここで保管されてきた。現在は世界最大級の530 カラットのダイヤモンド「アフリカの星Star of Africa」がはめ込まれた王笏、東インド会社がヴィクトリア女王VictoriaⅠに贈ったコヒヌールkoh-i-Noorダイヤモンドなどが飾られている。

    ジュエル・ハウス Jewel House 中世の王室の主要な宝物庫でもあったため、クラウン・ジュエルの一部は常にここで保管されてきた。現在は世界最大級の530 カラットのダイヤモンド「アフリカの星Star of Africa」がはめ込まれた王笏、東インド会社がヴィクトリア女王VictoriaⅠに贈ったコヒヌールkoh-i-Noorダイヤモンドなどが飾られている。

  • ビーチャム・タワーBeauchamp Tower
13世紀末に建てられた4 階建ての塔。比較的身分の高い囚人が幽閉された。塔内の壁には、囚人が残したメッセージや絵が残されている。夏目漱石は『倫敦塔』の中で、このメッセージを「百代の遺恨」と書いている。

    ビーチャム・タワーBeauchamp Tower 13世紀末に建てられた4 階建ての塔。比較的身分の高い囚人が幽閉された。塔内の壁には、囚人が残したメッセージや絵が残されている。夏目漱石は『倫敦塔』の中で、このメッセージを「百代の遺恨」と書いている。

  • ホワイト・タワー
White Tower
甲冑や武具、ヘンリー8 世の甲冑や拷問の道具の一部、ロンドン塔の歴史といった展示がメイン。日本の鎧兜も展示されている。中世には王族の結婚式が行われたセント・ジョン礼拝堂(写真上)もある。

    ホワイト・タワー White Tower 甲冑や武具、ヘンリー8 世の甲冑や拷問の道具の一部、ロンドン塔の歴史といった展示がメイン。日本の鎧兜も展示されている。中世には王族の結婚式が行われたセント・ジョン礼拝堂(写真上)もある。

  • セント・ピーター・アド・ビンキュラ
礼拝堂 礼拝堂の大理石の床下には、無実の罪で処刑され、今も幽霊になってさまよっているという、アン・ブーリンも埋葬されている。ガイドツアーか閉館1 時間前のみ入場可(要確認)。
クイーンズ・ハウスには、今も衛兵と家族たちが住む

    セント・ピーター・アド・ビンキュラ 礼拝堂 礼拝堂の大理石の床下には、無実の罪で処刑され、今も幽霊になってさまよっているという、アン・ブーリンも埋葬されている。ガイドツアーか閉館1 時間前のみ入場可(要確認)。 クイーンズ・ハウスには、今も衛兵と家族たちが住む

  • 処刑場跡 Scaffold Site
このあたりで地位が高い人たちの処刑が行われた。そのなかでも特に痛ましいのは、「9日間の女王」レディ・ジェーン・グレーLady Jane Greyと、ヘンリー8 世HenryⅧ の2 番目の妃アン・ブーリンAnneBoleyn。ジェーンは戴冠式を待ってロンドン塔入りしたが、いとこのメアリー1世MaryⅠに王位を奪われたあげく反逆罪に問われた。アンは世継ぎの王子ができないのを姦通罪の名目で処刑された。

    処刑場跡 Scaffold Site このあたりで地位が高い人たちの処刑が行われた。そのなかでも特に痛ましいのは、「9日間の女王」レディ・ジェーン・グレーLady Jane Greyと、ヘンリー8 世HenryⅧ の2 番目の妃アン・ブーリンAnneBoleyn。ジェーンは戴冠式を待ってロンドン塔入りしたが、いとこのメアリー1世MaryⅠに王位を奪われたあげく反逆罪に問われた。アンは世継ぎの王子ができないのを姦通罪の名目で処刑された。

  • トレイターズ・ゲート Traitors' Gate
「反逆者の門」という意味で、多くの処刑者や囚人たちがテムズ河からこの門をくぐり、塔内の牢獄に入れられた。キャサリン・ハワードやアン・ブーリンも、この門から入り投獄されている。上部の中世の香り漂うミディーバル・パレスMedieval Palace(トレイターズ・ゲートからランタン・タワーにかけてのエリア)には、城としてのロンドン塔をほぼ完成させたエドワード1世の居所などがある。

    トレイターズ・ゲート Traitors' Gate 「反逆者の門」という意味で、多くの処刑者や囚人たちがテムズ河からこの門をくぐり、塔内の牢獄に入れられた。キャサリン・ハワードやアン・ブーリンも、この門から入り投獄されている。上部の中世の香り漂うミディーバル・パレスMedieval Palace(トレイターズ・ゲートからランタン・タワーにかけてのエリア)には、城としてのロンドン塔をほぼ完成させたエドワード1世の居所などがある。

  • ブラディ・タワー Bloody Tower
エドワード4 世Edward Ⅳの息子エドワード(当時12 歳)とその弟が、父王の死後(1483 年)、ロンドン塔で即位の日を待っている間に行方不明になった。ふたりの死体は後にホワイト・タワーの南階段下で発見されたが、血染めの塔ブラディ・タワーはふたりの殺害場所と言い伝えられている。疑いはリチャード3 世RichardⅢとして即位した叔父にかけられていたが、真偽は今も謎に包まれている。

    ブラディ・タワー Bloody Tower エドワード4 世Edward Ⅳの息子エドワード(当時12 歳)とその弟が、父王の死後(1483 年)、ロンドン塔で即位の日を待っている間に行方不明になった。ふたりの死体は後にホワイト・タワーの南階段下で発見されたが、血染めの塔ブラディ・タワーはふたりの殺害場所と言い伝えられている。疑いはリチャード3 世RichardⅢとして即位した叔父にかけられていたが、真偽は今も謎に包まれている。

基本情報

住所
Tower Hill, EC3N 4AB
電話
3166 6000
開館日
火〜土 9:00 〜17:30
日・月 10:00 〜17:30
11〜2 月の閉館は16:30
最終入場は閉館の30 分前
料金
£26.80(寄付付き£29.50)
オンライン£22. 70( 寄付付き£25)
休業日
1/1、12/24 〜26、各
施設のメンテナンス日
地下鉄駅
Tower Hill
最終更新 :

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